次世代の『稼ぐ店長』強室
月刊誌『セルフサービス』2002年7月号
第1話ー【職場でのお仕事は楽しいですか?!編】


 皆さ〜ん♪ こんにちは!5ヶ月のご無沙汰で〜す!(^o^)丿 今年の2月号まで、多くの方にSM絞首刑台への13階段』をご拝読頂き、誠に有難うございました。m(__)m 掲載終了後も沢山の応援やリクエストのお声を頂戴し、又こうして皆様にお会いできることを大変嬉しく思います。

 

さて、本号より来年の2月号までの予定で(あくまで予定であり、不人気であれば途中降板も…)新しく連載がスタートするわけですが、今回は皆様からのリクエストでも多かった『マネージメント』や『計数管理』を新シリーズ…次世代の『稼ぐ店長』強室と題して書いてみたいと思います。ただでさえ、硬く難しい『お題』ですので、前回のように面白く楽しく書けるのか…自分でもちょいと不安ですが、頑張ってみたいと思います。

 

『あの店長が来たら、荒利が下がった。』『あの主任が替わったら、パートさんの退職者が多いよねぇ。』貴方の身の回りではこのような噂話をしたことや、聞いたことはありませんか?よく聞きますよね。(笑)この会話の通り、スーパー業界ってマネージャーによって、大きく業績や組織の団結力が変わるんですよねぇ。

求められるマネージャーの本質とは?!

マネージャー…それはマネジメントする人。では、最初にマネージャーの必要条件って何でしょう?マネジメントには二つの種類があります。その一つは、『ビジネス・マネジメント』。よく人事評価項目に職務遂行能力って書かれているヤツです。つまり、『あの人、仕事できるよねぇ〜』と言われるようになれ!ということなのです。

もう一つは、『パーソナル・マネジメント』。これは、何でもかんでも自分でやるのではなく、うまく組織や部下を使って仕事が出来なければならないということです。また、そのことが大きく部下育成にも繋がって来るんですよネ!

前回のシリーズでは、売場作りを中心とした『ビジネス・マネジメント』をお話して来ましたが、今月はマネジメントの中でも、人や組織を動かす『パーソナル・マネジメント』にフォーカスして、お話していきます。

貴方は、陰で悪口を言われてませんか?

『病を診て 人を診ずは 誠の医にあらず!』これは人や組織を動かす上で、是非、覚えておきたい教訓です。病気の症状だけを見て、その患者の人なり(性格、生活、環境などから来る原因)を診なければ、真の医者とはいえない…という意味だと思います。

皆さんや皆さんの上司はいかがですか?『何や?この売場は!これで売上が上がるもんかーいッ!』『ロスも売変も多いし…毎日、どんな仕事しとるんや!』…などと、症状だけを見て怒ってばかり…(-_-;)

やはり、結果(症状)だけでなく、何故こうなったのか、何故こうするのか…など、その人の置かれている環境を見てあげることが大事なんです。すると、結果的に自分に原因がある場合が多いものなんですよね。

【平均勤続年数の短い企業の法則性】

私は某企業を辞めた時、次なる某企業からヘッドハンティングを受けました。この企業の面接を受ける前にこの企業について調べてみると、異常に社員の平均勤続年数が短いことが気になりました。そして、そこの社長様による面接の中で、出てきた言葉・・・うちの社員は出来の悪いバカばっかりだから、君の力でこの会社の風土を変えてほしい。』もう10年も前のことですが、未だに私の耳にシッカリと残っておりますよ。この言葉を聞いたとき、私 思いましたねぇ〜。この会社に入ったら、その日から私もそのバカの一人になるんだろうな…ってね。(笑)

この仕事をしていると、色んな会社のトップの方とお話する機会があります。やはり、このように自分の社員をけなす方が居られます。そして決まって、その会社の平均勤続年数は短いんですよ。そりゃ、そうでしょうね。あんな事を部外の方に平気で言うぐらいですから、たぶん社内ではしょっちゅう言っておられるんでしょう。これでは、やる気どころか、会社に対するロイヤリティも沸きませんもんね。

逆に、自分の社員を誉めまくるトップの方も居られます。…で、何故今、業績悪いの?『いやぁ、私のリーダーシップが悪いんですよ〜』と、皆さん同じように笑顔で答えられるんです。部下を誉めることが出来る…つまり、よく部下の『人なり』を診ている証拠です。誰しも人の悪いところは簡単に見つけられますが、良いところはジックリ観察しないと見えないものです。そして、実際このような会社の内部に入ってみると、社員の皆さんが明るい!やる気がみなぎっている。だから、新しい発想や仕掛けが至る所にあります。更には、このような会社に限って、社員さんは上司の悪口、陰口を言うどころか、皆さん尊敬の念をお持ちになっているんですよね。

 

部下に『やる気』がないのはアンタの責任!

 

前作『SM絞首刑台への13階段』の最終章(本誌2月号)では、パートさん200名に訊いた『仕事に燃えるために望むこと』というアンケートデータを紹介しながら、部下にやる気がないのはマネージャーの責任、マネージャーの自身のマネジメントが変われば、もっとパートさんは仕事に燃える!と述べました。

そこで、本号ではそのことについて、具体的にどうすればいいのかをお話してみることにします。

【実録!再建請負人・平山式マネジメント】

昔々(15年前)、ある所にユニードという膨大な累積赤字を抱えた年商3500億クラスの村(スーパー)がありました。しかし、村長が変われど、変われど、業績は一向に改善されません。

そこへ平山敞(現ダイエー専務・営業本部長)という翁が新村長としてやって来た。村人は、『今度のお人は、本体の屋台骨の主で、とても恐ろしいお方らしい。お〜桑原、桑原!』とビビッておりました。

早速、これまでの村長と同じように新村長の店舗巡回が始まりました。いや!これまでのやり方とは全く違ったものであった。これまでの巡回と言ったら、多くの閣僚を金魚の糞のように引き連れ、下に〜下に!そして、お客様の前であろうと、バッタバッタと鋭いお言葉を振りかざす…そうそ、まるで大名行列であった。いえ、その当時は村人誰しもこれが当たり前と思っていたから、今思えばおかしいよね。

ところが、この新村長、一切のアテンド(案内役)を不要、事前連絡もナシとした。これには村人はビックリ!いや、楽になったと言った方がいいだろう。2.3日前からの村長対応という仕事が無くなったのだから。一人で、ゆっくり自由に廻る。・・・そう!水戸黄門漫遊記だな。

この村、村民1万人のうち、8千人は昼間だけこの村にいるパートさん。そう!3500億の売上は実際、この村娘たちが作っていたのである。そして、新村長は巡回時に、売場にゴミが落ちていようが、品切れがあろうが、何も怒らないのである。売場の良い点を見つけては、村娘に『いいねぇ〜この売場。貴方が作ったの?じゃ、これからも頑張って!』と声を掛け、握手をするんだな。

すると、売場のあちこちから村娘たちの悲鳴が上がる。『村長に誉められたよーッ!』『また頑張ってネって言われたよーッ!』『私なんか、サインまでしてもらったんだからネ!』そりゃ、そうだろうね。村長という雲の上の人から直接声を掛けて頂いた。しかも、それはお褒めのお言葉。舞い上がる気持ちもうなづける。当時、私は小さな区長をしていたが、村娘を始め、村民から村長の悪口・陰口を聞くことは一度も無かった。

売場のゴミ、品切れ…など言われなくても、村娘みんな気づいているし、指摘されなかったことで、逆に反省もした。そして、全店の村娘たちは『次回、村長はいつ来るんだろう?』と楽しみにしながら、『今度はこんな売場を作って見せよう!』と張り切って来た。この村に初めて、『やる気』というエネルギーが燃え盛り、『創造力発揮』『知恵の結集』という言葉がホントに『村の文化』となったのだ。

この新村長誕生から4年後、このユニード村は既存店伸び率全国ナンバーワンを樹立し、あの膨大な累積赤字も全部消したそうな・・・。



【マズロー5段階欲求】

これはよく目にする『マズロー5段階欲求』です。人は誰しも、一番下の『生理的欲求』から始まり、それを満たすことで、次なるステップの欲求へ行くと言われています。そして、最後の欲求が『自己実現の欲求』…つまり、究極の欲求こそが『やる気』なのです。普通どこの企業でも、行きたい時にお手洗いに行けますし、食事だって摂れます。また、毎月決まったお給料を頂けます。つまり、『生理的欲求』と『安定(安全)欲求』については満たされているわけです。では何故、企業によって、職場によって、皆さんの『やる気』が全然違うのでしょうか?その原因は、『社会的欲求』と『自我の欲求』の充足度の違いなのです。

では、ココでマネージャーの皆様にチェックタイム♪

@  貴方は自ら、部下の皆さんに挨拶や声掛けしていますか?まさか、部下から挨拶されるのを待っていませんか?

A   女性、特にパートさんの髪型・化粧・靴の変化に気付いて、声掛けしていますか?(まぁ、これも言い方によってはセクハラに取られたりしますから、要注意ですけどネ!)

B   パートさんにも社員と平等に、今年度の方針や今日の売上予算とか、シッカリ伝えていますか?

C   部下全員の誕生日を手帳につけて、『おめでとう!』の声掛けをしていますか?

ココで大事なポイントは、パートさんと社員はいつも平等であること。社員が上で、パートさんが下と思っていたら、大間違い!単に勤務時間による雇用契約の形態が違うだけ!ということをお忘れなく!

【よく見かける会議の風景】

上司が『何か、いいアイデアはないかぁ〜?』と出席者に呼びかける。ある者がアイデアを言う。すると、上司…『あ〜それはオレが若い頃、やったけどダメだったな。』また、次の者がアイデアを言う。すると、また…『それは会社で禁止されている。』更には、『そんなの今までやったことがない。』その内に…出席者は『別にありません』『同じです』とダンマリに入る。この状況を捉えて、ここのマネージャーは『うちの者はなかなか自分の意見を言わない』『考えない』『やる気を感じない』と言う。

当たり前である…(-_-メ) 言っても否定されると分かっていて、自ら意見を述べる者はいないよねぇ。『そんなん言うんだったら、自分で考えたら〜(-_-;)と言いたい気分である。このように、出てくる意見を次から次に叩く(否定する)ことを、私はゲーセンにある『ワニワニパニック』型マネジメントと呼んでいる。

自慢ではないが…私が司会をすると、皆さんが活発に意見を言ってくれて、そこのマネージャーもビックリする。そのコツは、@まずは会議自体を明るくする。(笑いも誘う)A出てきた意見は絶対に否定しない。もちろん!私でも考え付くような意見でも笑顔で『オーッ、いいねぇ〜』と言う。確かに、出席者の中にはとんでもない事を言う人もいる。しかし、これを否定すると、次なるいいアイデアが出て来ないのである。まぁ、とんでもない意見の場合、上位者が指摘しなくても、皆さん分かっていますって。(^o^)丿

売場での指導も同じ事。悪い事を先に指摘するのではなく、まず最初に『いいねぇ〜』と誉めてあげる。そして、その後に『欲を言えば・・・』とアドバイスしてあげるんです。こうすることによって、『じゃ、これではどうよ?!』と新しいアイデアで果敢に攻めて来る。つまり、これで埋もれていた素晴らしいアイデアや意見を吸い上げることが出来るんです。これが私のUFOキャッチャー』型マネジメントと推奨しているんです。

 

そろそろお時間となったようです。いかがでしたか?やっぱり、マネジメント論を面白く伝えるって難しいですね。身を持って、実感しました。(~_~;) では、今月はこの辺で(^.^)/~~~